100年後の森をつくる(完)〜小さな苗に託す大きな未来〜
晴天に恵まれた11月上旬。
当団体がコーディネートした河北新報社主催「今できることプロジェクト」のボランティアツアーが開催されました。
ボランティア活動先は亘理町で津波によって失われた防潮林の再生に取り組んでいる「わたりグリーンベルトプロジェクト(以下GBP)」です。
(詳細は過去2回の記事をご覧ください)
行きのバス車内では、参加者のみなさんから自己紹介と参加動機を教えて頂きました。実は今回のツアー、60人の定員に400人の応募があり、ご当選した方々はかなりの幸運の持ち主なのです(笑)
「夫婦で参加しています、家族の記念として、自分たちで植えた木が未来へ残っていくことに興味があり参加しました」
「震災当日は東松島にいました。当時生後2ヶ月だった娘と参加しました。親子で良い経験になればと思います」
参加者のみなさん少し緊張されている様子でしたが、それぞれの参加動機には、震災後どのように過ごしてきたか、震災から月日が経って、現在の心境の変化などが含まれていました。
わたりGBPでは約4万4千本の植樹を予定しているそうですが、今回のツアーでは、そのうち約300本植えることになっていました。
植樹場所に到着し、まずは草むしり。スタッフさんが「自生している松も芽を出して居ます、どこかからタネが飛んできたのでしょう、それも森の一部として生かしていきたいので間違えて抜かないでください」と言い、ふと足元をみると、たしかに!松の赤ちゃんが!
下草を抜いたらいよいよ植樹です。植えた木には自分の名前の木札をかけます。
「この木札が朽ちてしまう前に、ぜひもう一度成長を見にきて下さい」とスタッフさん。
参加者のみなさんも何本か植えているうちにどんどんコツを掴んできて、あっという間に300本植え終わりました。
みなさん、上着を脱いで額に汗が滲んでいます。
記念の集合写真の掛け声は「はーらーこーめーしーー!!」。
そう、この作業の後お昼ご飯は「はらこ飯」が待っているのでした。(参加動機がはらこ飯という方も!)
植樹の後は防潮堤に登り、青く穏やかな海を眺めます。海からひんやりした風が吹いてきて、汗ばんだ身体に心地よく感じます。
澄み切った空の下、遠くには金華山、振り返ると蔵王連峰が見えました。
そしてお昼ご飯は、参加者のみなさんが待ちに待ったはらこ飯!
午前中の作業の疲れを十分に癒してくれる最高のご馳走でした!


食後にはわたりGBPの嘉藤さん東さんから改めてプロジェクトの説明がありました。
「今後は木の伐採や管理、プロジェクト自体もどう進めていくのか、多くの課題があります。」と嘉藤さん。


(左が事務局の東さん、右が嘉藤さん、ゆで落花生はつぶが大きいガッツリという品種です)
震災前の森を取り戻すために要する年月は100年。森つくりは世代を超えて、長く伝えていく必要があります。
プロジェクトを支える資金を得るため、わたりGBPでは農産物の生産にも力を入れています。
午後はその1つである落花生とさつまいもの収穫体験をしました。


落花生もさつまいもも、土の中に埋まっています。葉や蔓が途中で切れて、掘り返さないと見つからないものもあり、まるで宝探しのよう!
参加者のみなさん熱中していました!ビニール袋いっぱいのお土産に、みなさんの顔もホクホク。
帰りは「わたり温泉鳥の海」で疲れを癒し、帰路についたのでした。
今回のツアーをきっかけに、ボランティアインフォとしても、大規模災害の後それぞれのフェーズで必要とされる支援の仕方、関わり合い方を丁寧に情報発信していくこと、そして繋げていくことが必要だと実感しました。
(参加者の皆山が植えた300本の苗木、これからどんな森ができていくのでしょうか)
震災から10年という節目の年が近づいてきます。1人1人が「今できること」を探していけるお手伝いをしていきたいと思います(及川)
100年後の森をつくる2〜構想を形に〜
↑以前ブログでご紹介したわたりグリーンベルトプロジェクトさんを、河北新報社の方と再度訪問してきました。
今回の訪問は、河北新報社さんが企画する「今できることプロジェクト」にて当団体がボランティアツアーのコーディネートを実施しているため、その下見と取材を目的に行って来ました。
前回7月に行ったときより、畑の緑が濃くなっていて、新しい名産として栽培されている落花生が収穫時期を迎えていました。
畑の仕事は主に亘理町に住んでいる高齢者のみなさんが行っています。ちょうど私が到着した時間、ビニールハウスの外でみなさんお茶っこタイムをしていました。
この菜園事業はおらほの畑という被災高齢者のコミュニティ再生と生きがいづくりを目的にわたりグリーンベルトプロジェクトが行っています。送迎つきで午前中は畑仕事、お昼は手作りのご飯をみんなで食べて和気あいあいと過ごします。
栽培する野菜はさつまいも、落花生、トマト、なす、ズッキーニなどたくさんの種類がありました。お昼ごはんに私もいただきましたが、どれも新鮮で美味しいものばかり!
この日「さっき収穫したばかりの初物です!」と見せていただいたのは落花生!
粒が大きく、収穫したあと乾燥させずに茹でて食べるそうです。
この落花生が実はこれからの森づくりを支える重要な資源になるのだとか。
植樹した苗が一人前の木なるまで約30年、森ができるまで100年というはてしない年月がかかることは前回の記事でお伝えしました。
ちょうど今年、設立当初に制定したマスタープランでの植樹作業が終わるそう。これからは森を育てるために維持管理していくフェーズに入ります。植えた苗木の周りの草むしりなど、維持管理にも多額の費用がかかります。この落花生は新しい特産品として育て、その収入で森づくりを支えていくのだそうです。
試しに一株、収穫体験させていただきました。株の真ん中を掴んで左右に揺らしながら力を込めて引っこ抜きます。それをひっくり返すと、まるまる太った落花生がたくさん!
これを塩茹でにして早速当日の夜ビールのお供にいただきました。ホクホクして甘みもあり、食べる手が止まりませんでした。(塩多めで茹でるとおいしくできます!)
プロジェクトの代表、嘉藤さんにプロジェクトについてお話を伺いました。
「構想を語る人はこれまで何人もプロジェクトに関わってきた。でも、語るだけではだめ、それを形にすることが大事」とのこと。これには同席していた河北のみなさんも深く頷いていました。
東北特有の冷たい風である「やませ」から作物を守り、災害時にはたくさん命を守り、野鳥の住処となり、ミネラルたっぷりの海を育てる、たくさんの恵みを与えてくれる森を作ることは壮大で魅力ある計画ですが、それを形にするには果てしない時間とお金がかかります。
でもそれを形にしていくには、いま、ここから続く地道な積み重ねでしか成し得ることができません。ボランティア1人が苗木を植えるその行為は大事な小さな一歩なのだと思います。
河北新報社主催で当団体がコーディネートをする「いまできることツアー」は11月2日開催です。ぜひたくさんの方にご参加いただき、この森作りの当事者が増えることを願っています。
ツアーの募集詳細は今後河北新報紙面やwebにて発表予定です。公表されましたら当団体でもお知らせしますのでどうぞお楽しみに!
(及川多香子)