取り残される、自宅被災者〜奮闘するチーム王冠〜

きっかけは、たまたま見つけた、ボランティア団体のブログだった。
震災から9か月が経とうとしているのに、あまりに壮絶な被災地の現状が書いており、にわかに信じられなかった。

床張りが終わっていない、壁が無いリフォームの済んでいない自宅避難者の一人暮らしのおばあちゃんの家では、支援物資でもらったストーブで部屋を温めても、室温が1〜2度しか上がりません。

夏前にもらった数枚の薄い洋服に身を包みながら、「あったかい洋服がほしい」と骨折で痛めた足をさすりながら、津波に濡れたグチャグチャの布団で、それしかないから毎日乾かしながら他人に借りた毛布にくるまりながら、すでに賞味期限が切れてしまったインスタント味噌汁を、大丈夫、大丈夫と言いながらすすっています。

——忙しいとは思いますが、看護士、介護士、福祉士、また同様のスキルを持った方、良識ある人生経験豊富な大人の方の参加をお待ちしています。
被災地を、そこで暮らす人たちを助けて下さい。(チーム王冠代表ブログ 一部抜粋)


チーム王冠という名前は耳にしたことがあったが、訪問したことは無かった。
もしこの内容が本当なら、未だにたくさんの支援を待つ被災者がいることは容易に想像が出来たし、この情報は発信しなければならないと感じたので、すぐに連絡を取り、石巻に向かった。

被災し、廃業となった石巻のガソリンスタンドの一角に、チーム王冠の拠点事務局であるプレハブはあった。


「把握しきれていない、自宅被災者はおよそ1万人超え」



「壮大な話になるけど、いいかな?」
チーム王冠代表の、伊藤さんはそう前置きしてから話てくれた。

石巻は被災地の中でも、自宅被災者が多い地域だそうだ。津波で1階が損害を受けても2階に住むケースが多く、そういった自宅被災者は、チーム王冠が把握しているだけでも2500世帯ある。
しかし、これまで国内でこれほどの規模の自宅避難者が出たというケースが無く、行政支援も機能していない。だから、どの地域に何人、どんな状況の被災者がいるのか、全体を把握している機関がどこにもないのだ。

チーム王冠は、どこかに頼るのではなく、民間で支え合うべきと考えチーム王冠を立ち上げた。地道に1件1件、粘り強く自宅被災者の家を周り、その情報をデータベース化、看護や福祉、医療などの専門機関と繋ぐというアセスメントを9月から行ってきた。

「布団が必要かどうか、聞いて回ってたんだけど、途中で怖くなってね。辞めたんです。」

夏も終わるころ、遠慮がちに被災者の一人から「冬用の布団は無いか?」と聞かれた。すぐに物資を手配し渡したところとても喜ばれた。もしかしたら、他にも必要としている人がいるかもしれない、と聞いて回ったが、聞けば聞くほどその数は増える一方。実際に、訪問した家で、1枚の布団を4人で使っている家族すらいる。支援できる確約が無く、期待を持たせてしまうことを懸念し、物資の数が確保できるまで聞き取りは辞めた。

伊藤さんは、自分の目で見てきたこと、その現状を伝えようと熱く語ってくれた。

「信じられないかもしれないけど、でも、本当なんだよ。水道もひねれば砂の混じった水が出てきて、飲めない状態。今一番リクエストが多いのはね、命の水なんだよ。」

精神的、体力的に限界に近づきつつある自宅被災者を前に、ケアには専門的な知識経験がある人ではないと、対応できないと感じた。看護、福祉、医療、カウンセラーや僧侶など、ボランティアで来てもらい、9月からヒアリングを開始。当初1件につき30分を目安に訪問予定を立てたが、甘かった。

支援から取り残されていると感じていた被災者の話は尽きなかった。
今まで、誰にも話せなかった悩み、話す相手がいなかった「本当は死にたい」という辛さ、1時間、2時間と時間は過ぎ、終わる頃には、ボランティアも被災者もお互い涙が止まらなかった。

「ありがとう、ありがとうってね、泣きながら感謝されるんだよ」
伊藤さんは、少し顔を緩ませて言う。
話を聞いたボランティアは、壮絶な被災者の話を聞き、二次被災体験をすることになる。ボランティアの心のケアも慎重に行っている。

約80万個あると言われる被災家屋、リフォームをして住める状態にするには、職人が足りない。石巻市内で調達するだけで30年かかると言われている。そのため、独自にリフォーム連合を立ち上げ、埼玉、東京、神奈川などに支援を呼びかけた。

「まだまだとてつもない数の、支援が必要なんです」
伊藤さんは、力を込めて言った。
仮設住宅は、支援が飽和状態だという。もちろんそれも地域によるだろう。
しかし埋まらない支援格差をなんとかしようと、その現状を見てしまった、知ってしまった者として、責任感を持って活動している団体が居るということを、多くの人に知って欲しい。

震災前は、仙南で居酒屋を経営していたという伊藤さん、私たちが帰るとき「来てくれてありがとう」とほほ笑む顔に、とても深いやさしさを感じた。
たった4人のスタッフで運営するチーム王冠の目の前には、確実に支援が必要な人が待っている。今後多くのボランティアが協力してくれるよう、私たちも力になっていきたいと思っている。

(ボランティアインフォ・大藤)



【ボランティア募集情報はこちら!】チーム王冠 Yahoo!Japan復興支援サイト