硯石に思いを込めて〜雄勝町船越地区、中里孝一さん〜

石巻雄勝町は「雄勝石」と呼ばれる石を原料に、硯の生産量日本一を誇る硯の町です。
またその硯石は瓦石としても用いられ、地元民家の瓦だけでなく、東京駅の屋根に使われるなど古くから全国に出荷されてきました。
硯石が瓦に使われる際は薄くカットされ、かまぼこ型に形を整えます。

今回私は震災でがれきと化した家に使われていた瓦石を小さくカットして、置物やアクセサリーにしていると聞き、石巻雄勝町の船越地区を訪れました。

船越地区の中心的役割を担う、漁師の中里孝一さん。

中里さんとの出会いは8月。
もっとボランティアをプロジェクトで学生が初めて訪れたのがきっかけで、ボランティアを募集のお手伝いをさせていただきました。

本日伺ったときは浜近くの納屋で作業中、人懐こい笑顔で「よぐきだなや〜」とお出迎え。
中里さんのすごいところは6月から復興のためブログを始めたのです!少しでも船越のことを伝えるため、携帯電話から日々更新する姿勢はほんとうに素晴らしい。
船越復興への歩み—中里さんのブログ
ズーズー弁もそのままに、小さな集落ながら一生懸命に前へ進もうとする船越の皆さんの様子が綴られています。
私たちは、もう二度とここには戻って来れないだろうと思いました。

でも、船越が好きです。
津波は憎いけれども、船越の海が大好きです。
私たちは海の恩恵を受けて生きてきました。
これからも海の恩恵を受けて、船越で生きていきたいと思います。


中里さんに連れられて、建物の3階まで津波が来た船越小学校に向かいました。
ここでは船越の女性陣、通称「船越レディース」が硯石を使ったオリジナルグッズを作成中でした。
「作成のきっかけは京都からきたボランティアさんからの提案なんです」
と教えてくれたのは、中里さんの奥さん。
「初めはそんな作業する余裕も心に無くて、やる気も起きなかったけど、やりたいって仲間が言い出して。」
「それから今のメンバーが集まりました。みな船越を離れて石巻や内陸の仮設などから通っています。」


みんなで作業すれば話も弾むし、前向きになれる。
家に閉じこもってちゃだめだと自分を奮い立たせられる。
何より船越に戻ってきたいのよ、また地震の前みたいに。

そんな気持ちで作っていると船越レディースの皆さんが教えてくれました。

小さくカットした硯石には繊細な絵付けをし、上からニスを塗ります。
とても完成度の高い船越オリジナルグッズ。
今回、大小様々なグッズを30個ほどお預かりしました。これは10月4日より東北電力グリーンプラザで行われる企画イベントにて販売させていただくことになりました。
収益は全額とも船越復興のために使われます。

小学校でお話しを伺った後、中里さんのお宅でお昼ご飯まで頂いてしまいました。
今朝水揚げされたという鯵のマリネが本当に美味しかったです。
「まだおいで」と手を振って見送ってくれる姿に、船越の人たちの暖かさを感じました。
(ボランティアインフォ 大藤)